設立の手続き

国税のキャッシュレス納付、手数料は1万円ごとに99円。無料の上限は30万円

結論

クレジットカード納付の決済手数料は納付税額1万円ごとに99円(税込)が加算され、1度の手続で1,000万円未満までです。スマホアプリ納付とコンビニ納付(QRコード)は手数料が無料ですが、納付税額30万円以下しか使えません。事業所得1,200万円の設例では、法人化後の国税のうち地方法人税6.8万円と源泉所得税の半年分9.3万円は無料の手段で納められ、消費税128.0万円と法人税65.6万円をカードで納めると手数料は合計19,206円です。

  • クレジットカード納付は複数の税目をまとめて納付手続できないため、法人税と地方法人税は別々に納める。切り上げも税目ごとに起きる
  • 事業所得1,500万円では源泉所得税の半年分が9.3万円で無料の手段に収まるが、1,800万円では49.5万円になり外れる
  • 国税だけを見ると法人化で手数料は下がる。事業所得3,000万円で個人116,226円・法人75,141円。法人住民税と法人事業税は地方税で対象外

法人成りすると振替納税がなくなるため、納付の手段を自分で選ぶことになります。国税庁が用意しているキャッシュレス納付には、手数料がかかるものと無料のものがあります。無料の手段のうち2つには納付税額30万円以下という上限があり、残る1つは事前の届出が要ります。

ここで効いてくるのが、クレジットカード納付では複数の税目をまとめて納付手続できないという制約です。法人化後の国税は法人税・地方法人税・消費税・源泉所得税に分かれるため、上限の判定も手数料の計算も税目ごとに別々に起きます。判定ツールの計算エンジンで税目別の金額を出し、どの税目なら無料で納められるかを計算しました。

クレジットカード納付の手数料は1万円ごとに99円。納付額が増えても率は下がらない

国税庁が公表している決済手数料は、納付税額1円〜10,000円で99円(税込)、以降は納付税額が10,000円を超えるごとに99円が加算される仕組みです。10,001円〜20,000円で198円、20,001円〜30,000円で297円と積み上がります。

納付額がいくら大きくなっても、この刻みは変わりません。 量をまとめれば率が下がる、という値引きはありません。実効率は一貫して0.99%前後で、10,000円の刻みを1円超えた直後だけ跳ね上がります。

納付税額決済手数料(税込)納付税額に対する率
10,000円99円0.99%
10,001円198円1.98%
30,000円297円0.99%
30,001円396円1.32%
300,000円2,970円0.99%
300,001円3,069円1.02%
1,000,000円9,900円0.99%
5,000,000円49,500円0.99%
9,999,999円99,000円0.99%

※ 国税庁「クレジットカード納付のQ&A」Q1-4の刻みから計算(2026年9月30日確認)

クレジットカード納付の利用可能額は、1度の手続につき1,000万円未満、かつ利用するカードの決済可能額以下(決済手数料を含む)です。この前提の設例だと、法人の消費税及び地方消費税が1,000万円に届くのは事業所得が1億円に近づいたときなので、当たることはまずありません。

手数料が国の収入にならない理由は仕組みにあります。納付受託者(クレジットカード納付は株式会社エフレジ)が利用者から委託を受けて立替払いで国に納め、後から利用者に請求します。納付受託者は貸倒リスクを負い、利用者は納付を繰り延べる利益を得る。国税庁はこの関係を根拠に、手数料は利用者の負担だと説明しています。

手数料が無料の手段には、30万円の上限と事前の届出という別の壁がある

手数料がかからない納付手段は3つあります。ただし壁の場所がそれぞれ違います。

納付手段決済手数料1回あたりの上限事前の準備
スマホアプリ納付発生しない納付税額30万円以下決済アプリへの登録と残高のチャージ
コンビニ納付(QRコード)不要納付税額30万円以下QRコードの作成(納付は現金のみ)
ダイレクト納付不要利用可能額は金融機関ごと税務署へ届出書を書面で提出
クレジットカード納付1万円ごとに99円(税込)1度の手続で1,000万円未満なし

※ 国税庁の各納付手段のページより(2026年9月30日確認)

30万円はスマホアプリ納付とコンビニ納付(QRコード)の上限で、1,000万円未満はクレジットカード納付の上限です。 桁が2つ違うので混ざりやすいところです。

ダイレクト納付は手数料が不要で、納付税額の上限も30万円のような一律の線ではなく金融機関ごとに定められています(国税庁の一覧で確認できます)。ただし法人は、専用の届出書を所轄の税務署へ書面で提出する必要があります。オンライン提出ができるのは個人だけです。書面提出だと利用可能になるまで1か月程度かかるため、法人成り直後の最初の納期限には間に合わないことがあります。ここを見落とすと、初回だけ手数料のかかる手段を使う羽目になります。振替納税との違いは振替納税は法人にないで扱っています。

なお、スマホアプリ納付とコンビニ納付(QRコード)は領収証書が発行されません(コンビニ納付では払込金受領証が出ます)。コンビニ納付(QRコード)には、所得税徴収高計算書により源泉所得税を納付する場合など使えない税目もあります。

法人化後の国税を税目別に見ると、無料で納められる税目が残る

納税額が年に数百万円あると「30万円以下の手段は使えない」と思いがちです。ただし上限の判定は1回の納付額に対して行われ、しかもクレジットカード納付では複数の税目をまとめられません。税目ごとに切り分けた金額で判定することになります。

法人化後の国税を税目別に出したのが次の表です。源泉所得税は納期の特例の承認を受けている前提で、半年分を1回として計算しています。納期の特例は給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者が対象で、1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日が納付期限です。承認を受けていなければ、原則どおり給与を支払った月の翌月10日までに毎月納めます。

事業所得法人税地方法人税消費税及び地方消費税源泉所得税(半年分)
400万円2.2万円
無料の手段が使える
0.2万円
無料の手段が使える
48.0万円
手数料4,752円
1.9万円
無料の手段が使える
600万円3.5万円
無料の手段が使える
0.3万円
無料の手段が使える
68.0万円
手数料6,732円
4.7万円
無料の手段が使える
800万円8.5万円
無料の手段が使える
0.9万円
無料の手段が使える
88.0万円
手数料8,712円
9.3万円
無料の手段が使える
1,000万円37.1万円
手数料3,762円
3.8万円
無料の手段が使える
108.0万円
手数料10,692円
9.3万円
無料の手段が使える
1,200万円65.6万円
手数料6,534円
6.8万円
無料の手段が使える
128.0万円
手数料12,672円
9.3万円
無料の手段が使える
1,500万円107.6万円
手数料10,692円
11.1万円
無料の手段が使える
158.0万円
手数料15,642円
9.3万円
無料の手段が使える
1,800万円84.2万円
手数料8,415円
8.7万円
無料の手段が使える
188.0万円
手数料18,612円
49.5万円
手数料4,950円
2,100万円117.4万円
手数料11,682円
12.1万円
無料の手段が使える
218.0万円
手数料21,582円
56.2万円
手数料5,643円
2,500万円187.4万円
手数料18,612円
19.3万円
無料の手段が使える
258.0万円
手数料25,542円
62.9万円
手数料6,237円
3,000万円293.2万円
手数料29,106円
30.2万円
手数料3,069円
308.0万円
手数料30,492円
62.9万円
手数料6,237円

※ 事業所得は青色申告特別控除前・経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・最適役員報酬/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人住民税と法人事業税は地方税のため含みません。1期目を想定し、法人税・消費税の中間申告はないものとしています ※ 「無料の手段が使える」は納付税額が30万円以下でスマホアプリ納付・コンビニ納付(QRコード)の範囲に収まることを指します

読み取れることは2つあります。

ひとつは、地方法人税だけは事業所得2,500万円まで30万円以下に収まることです。地方法人税は法人税額の10.3%として計算されるため、法人税より1桁小さい額になります。これを法人税とまとめて納めることはできないので、結果として無料の手段の枠に収まり続けます。

もうひとつは、消費税及び地方消費税はどの所得帯でも30万円を超えることです。売上に対して課税されるため、この設例では事業所得400万円の時点で48.0万円あります。法人成り後の国税で手数料が発生するのは、まず消費税だと考えておけばほぼ外れません。インボイス登録の有無で消費税の扱いが変わる点はインボイス登録済みなら法人化しても消費税の免税はないで扱っています。

事業所得1,500万円と1,800万円で、無料枠に入る税目が入れ替わる

表をたてに追うと、事業所得1,500万円から1,800万円のところで数字が逆に動きます。

  • 法人税:107.6万円 → 84.2万円に減る
  • 源泉所得税の半年分:9.3万円 → 49.5万円に増え、30万円以下の枠から外れる

法人税が減るのは、最適な役員報酬が月54万円から月90万円へ上がるためです。報酬として先に取り出す分が増えれば法人の課税所得は減り、代わりに給与から源泉徴収する所得税が増えます。役員報酬の最適額は手取りが最大になる点で決まるので、税目ごとの納付額はその副産物として動きます。最適額の探索そのものは役員報酬はいくらが最適かで扱っています。

納付手段の側から見ると、事業所得が増えたのに法人税の手数料は下がり、代わりに源泉所得税の手数料が0円から4,950円になるという入れ替わりが起きます。「所得が増えれば全部の税目で手数料が増える」という直感は成り立ちません。

事業所得1,800万円から2,500万円の帯では、無料の手段で納められる国税は地方法人税だけです。3,000万円になると地方法人税も30.2万円で枠を外れ、無料で納められる国税はなくなります。それでも税目が分かれていること自体は有利に働きます。事業所得1,800万円の年間の国税380.0万円を1回で納めるなら、無料の手段は最初から候補に入りません。

国税だけを見ると法人化で手数料は下がるが、判定は動かない

個人のままなら国税は申告所得税及び復興特別所得税と消費税及び地方消費税の2税目、法人化すると法人税・地方法人税・消費税・源泉所得税の4税目です。税目が倍になるので手数料も増えそうに見えますが、逆になります。

事業所得個人:国税の合計個人:手数料法人:国税の合計法人:手数料手数料の差
400万円56.8万円5,643円54.2万円5,544円−99円
600万円103.5万円10,296円81.3万円8,217円−2,079円
800万円161.1万円16,038円116.0万円11,583円−4,455円
1,000万円220.6万円21,879円167.6万円16,731円−5,148円
1,200万円293.1万円29,106円219.0万円21,780円−7,326円
1,500万円424.1万円42,075円295.3万円29,403円−12,672円
1,800万円555.2万円55,044円380.0万円37,818円−17,226円
2,100万円690.3万円68,409円459.9万円45,738円−22,671円
2,500万円905.9万円89,694円590.5万円58,608円−31,086円
3,000万円1173.2万円116,226円757.2万円75,141円−41,085円

※ 前提は上の表と同じ。国税をすべてクレジットカード納付で納めた場合の決済手数料(税込)

この差は税負担が軽くなったことを意味しません。 手数料が納付税額に比例するため、国税として納める額が減れば手数料も減る、という関係だけです。法人化すると同じ稼ぎのうち一部が法人住民税と法人事業税へ移りますが、これは地方税なので国税庁のキャッシュレス納付の対象外で、上の表には入っていません。法人住民税の均等割のように赤字でも毎年かかる固定費も、この表の外側にあります。

では手数料は法人化の判定に効くのか。判定ツールが出す実質差額と並べると規模感が分かります。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)最適な役員報酬実質差額(年)判定
400万円303.1万円274.5万円月28万円−48.6万円個人のまま有利
600万円427.3万円409.7万円月42万円−37.6万円個人のまま有利
800万円540.7万円536.6万円月54万円−24.1万円個人のまま有利
1,000万円657.1万円662.4万円月54万円−14.7万円ほぼ互角
1,200万円774.2万円787.6万円月54万円−6.6万円ほぼ互角
1,500万円928.2万円972.0万円月54万円+23.9万円法人化が有利
1,800万円1082.1万円1149.1万円月90万円+47.0万円法人化が有利
2,100万円1232.0万円1332.6万円月95万円+80.6万円法人化が有利
2,500万円1395.0万円1551.1万円月100万円+136.1万円法人化が有利
3,000万円1599.6万円1816.8万円月100万円+197.2万円法人化が有利

※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額

事業所得1,800万円なら実質差額は47.0万円で、全額をカードで納めた場合の手数料37,818円はその8.05%です。事業所得3,000万円では実質差額197.2万円に対して75,141円で3.81%になります。無視できる額ではありませんが、判定が入れ替わるほどの大きさではありません。 そして手数料は手段の選択で消せる部分です。ダイレクト納付の届出を法人成りの直後に出しておけば、事業所得1,800万円で年37,818円、3,000万円で年75,141円というこの支出は初年度から発生しません。計算の前提は計算の考え方にまとめています。

納める税額そのものは、売上と経費と役員報酬で決まります。一般論の数字ではなく、自分の条件で確かめてください。

まとめ

  • クレジットカード納付の決済手数料は納付税額1万円ごとに99円(税込)。納付額が増えても率は下がらず、1万円の刻みを超えた直後だけ跳ね上がる
  • 手数料が無料なのはスマホアプリ納付・コンビニ納付(QRコード)・ダイレクト納付。前の2つは納付税額30万円以下、ダイレクト納付は法人だと届出書の書面提出に1か月程度かかる
  • クレジットカード納付では複数の税目をまとめられないため、上限の判定も手数料も税目ごとに起きる。地方法人税は事業所得2,500万円まで30万円以下に収まり、消費税はどの所得帯でも超える
  • 事業所得1,500万円から1,800万円で最適な役員報酬が月54万円から月90万円へ上がると、法人税の納付額は減り、源泉所得税は30万円以下の枠から外れる
  • 国税だけで見ると法人化で手数料は下がるが、これは国税として納める額が減っただけで、税負担が軽くなったことを意味しない

よくある質問

クレジットカード納付の決済手数料は国に入るのですか?

入りません。国税庁は、決済手数料は国税庁長官が指定した民間の納付受託者が決定するもので、国の収入にはならないと明記しています。誤って納付手続をした場合も、決済手数料は還付等の対象になりません。

カードの引落しが納期限より後になると延滞税がかかりますか?

かかりません。国税通則法第34条の3により、クレジットカード納付は納付手続が完了した日をもって延滞税や利子税を計算します。法定納期限内に「国税クレジットカードお支払サイト」で手続を終えていれば、カード代金の引落し日が後になっても延滞税は発生しません。

決済手数料の請求書はどこでもらえますか?

「国税クレジットカードお支払サイト」の「納付手続の完了」画面を印刷して、適格(簡易)請求書として保存します。印刷を忘れた場合は、手続の際にメールアドレスを入力していれば、納付受託者から届く「納付手続の完了メール」を保存します。

法人住民税や法人事業税もこの方法で納められますか?

納められません。国税庁のクレジットカード納付が可能な税目の一覧に法人住民税・法人事業税は入っていません。これらは地方税で、納付の窓口も手数料の決まりも国税とは別です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。