法人化の判断

法人化のタイミングと決算期の決め方。年度途中でも損はしない

法人化は年度途中でもできます。均等割は月割になり、消費税の免税期間は決算期の置き方で最大近くまで伸ばせます。設立月と決算月をどう組み合わせるか、判断の順番を整理します。

「法人化するなら1月から」と考える人は少なくありません。個人事業の確定申告が暦年区切りなので、区切りをそろえたくなるためです。

しかし法人には決算期を自由に決められるという性質があり、年度途中の設立が不利になることはほとんどありません。むしろ設立月と決算月の組み合わせ次第で、消費税の免税期間を伸ばせる場合があります。

均等割は月割になる

法人住民税の均等割は、事業年度が12か月に満たない場合、月割で計算されます。

均等割額 × 事業年度の月数 ÷ 12

月数は暦にしたがって数え、1か月未満の端数は切り捨てます(全体が1か月未満なら1か月)。

東京23区・資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円なので、

設立から決算までの期間均等割
12か月7万円
6か月3万5,000円
3か月1万7,000円

年度途中に設立したからといって、1年分の均等割を取られることはありません。 この点で不利にはなりません。

均等割の仕組みは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円。誰がいくら払うのかで詳しく扱っています。

決算期の置き方で消費税の免税期間が変わる

インボイス登録をしていない場合、資本金1,000万円未満の新設法人は設立から2期は消費税の免税事業者になれます。

ここで効いてくるのが決算期です。「2期」は「2年」ではなく「2事業年度」だからです。

1期目を長くとると免税期間が伸びる

7月に設立するケースで比べます。

決算月1期目2期目免税でいられる期間
12月7月〜12月(6か月)翌年1月〜12月(12か月)1年6か月
6月7月〜翌年6月(12か月)翌々年7月〜6月(12か月)2年

決算月を6月、つまり設立月の前月に置くと、1期目を最大の12か月近くまで使えます。同じ7月設立でも、決算期の置き方で免税期間が6か月違います。

税抜売上1,200万円・課税仕入割合60%なら、免税による効果は年108万円。6か月分で54万円の差です。

ただし2期目については別の判定があります。1期目の前半6か月の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になります(特定期間の判定)。1期目を長くとる場合はこの点も確認してください。

インボイス登録済みなら、この話は成立しない

すでにインボイス発行事業者として登録していて、法人でも登録するなら、設立初年度から課税事業者です。決算期をどう置いても免税期間は生まれません。

この場合、決算期は消費税ではなく事業の都合で決めて構いません。詳しくはインボイス登録済みなら、法人化しても消費税の2年間免税は受けられないをご覧ください。

決算期を決める3つの基準

1. 繁忙期を避ける

決算月の翌々月末までに申告と納税が必要です。3月決算なら5月末が期限で、その前の1〜2か月は決算作業に追われます。

事業の繁忙期と決算作業が重ならないように置くのが基本です。3月決算は税理士も繁忙期にあたるため、対応が手薄になりやすいという事情もあります。

2. 売上の変動が読める時期に期首を置く

役員報酬は事業年度開始から3か月以内にしか変更できません。その時点で1年分の利益を見通す必要があります。

売上に季節性があるなら、繁閑の見通しが立ちやすい時期を期首にするほうが、報酬額を決めやすくなります。

役員報酬の決め方は役員報酬はいくらが最適か。96通り計算して分かった決め方で扱っています。

3. 資金繰りに余裕がある時期に納税を置く

法人税・消費税の納付は決算月の翌々月末です。この時期に手元資金が薄いと苦しくなります。入金が厚い時期の後ろに納税が来るように置いてください。

「いつ法人化するか」の判断順

まず所得が分岐点を超えているか

タイミングの前に、そもそも法人化が有利かどうかです。当サイトの試算では、東京23区・40歳未満・独身・青色申告という条件で分岐点は事業所得1,252万円あたり。配偶者が無収入なら966万円まで下がります。

超えていないなら、タイミングを考える段階ではありません。

超えているなら、早いほうがよい

分岐点を超えているなら、法人化を遅らせるほど差額を取り逃します。年間の実質差額が50万円なら、半年遅らせれば25万円の機会損失です。

「キリがいいから1月に」と半年待つ理由は、金額の面ではありません。

ただし、2割特例・3割特例を使っている個人は例外

2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終わりますが、その後継として令和9年・令和10年に3割特例が使えます。この措置は個人事業者限定で、法人化すると失います。

売上規模によっては、法人化を令和11年まで待つほうが有利になるケースがあります。法人化の年間差額と、3割特例で得られる金額を比べてください。

期の途中で切り替えると申告が2つになる

法人化した年は、個人事業分の確定申告と、法人の決算申告の両方が必要です。その年だけ税理士報酬が多めにかかることがあります。

これは一度きりの費用なので、判断を左右するほどではありません。ただし予算には入れておいてください。

設立時にまとめて決めること

項目判断基準
資本金1,000万円未満にする。均等割7万円・消費税の免税の両方に効く
決算月インボイス未登録なら設立月の前月(免税期間を最大化)。登録済みなら繁忙期を避けて決める
会社形態ひとりで当面規模を変えないなら合同会社。設立費用が15万円安い
役員報酬設立から3か月以内に決める。生活費を下限に、最適額へ寄せる

会社形態の比較は合同会社と株式会社、設立費用の差は約15万円で扱っています。

まとめ

  • 法人化は年度途中でもよい。均等割は月割になるので、1年分を取られることはない
  • インボイス未登録なら、決算月を設立月の前月に置くことで免税期間を最大2年近くまで伸ばせる
  • インボイス登録済みなら免税は生まれないので、決算期は事業の都合で決めてよい
  • 決算期は「繁忙期を避ける」「売上が読める時期に期首を置く」「入金の後に納税が来る」の3点で決める
  • 所得が分岐点を超えているなら、遅らせるほど差額を取り逃す
  • ただし2割特例を使っている個人は、3割特例(令和9・10年分)を失うことを踏まえて判断する
  • 法人化した年は個人と法人で申告が2つになる

自分の所得が分岐点を超えているかどうかを、まず確かめてください。

よくある質問

個人事業の廃業手続きはいつすればよいですか?

法人設立後、個人事業を廃止した日から1か月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ提出します。青色申告を取りやめる場合は「青色申告の取りやめ届出書」も必要です。都道府県・市区町村への事業開始等申告書の廃業届も忘れないでください。なお法人化した年は、個人事業分の確定申告が翌年に必要です。

事業年度は1年でなくてもよいのですか?

1年以内であれば自由に決められます。設立1期目だけ短くすることも可能です。ただし短くすると均等割は月割で安くなる一方、消費税の免税期間も短くなります。また決算作業と申告が早く来るため、事務負担の面でも一長一短です。

期の途中で個人から法人へ切り替えると、確定申告はどうなりますか?

その年の1月1日から廃業日までの個人事業分について、翌年の確定申告が必要です。同時に法人の決算申告も発生するため、法人化した年は申告が2つになります。税理士報酬もその年だけ多めにかかることがあります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。